オリーブ牛 公式サイト


オリーブ牛と県産野菜の料理セミナー 奥田政行

【オリーブ牛と野菜のマリアージュ】

これまで数多くの料理人が、香川のブランド食材、オリーブ牛を高く評価してきた。
アル・ケッチァーノ奥田政行シェフも、そのひとり。
奥田シェフが、オリーブ牛と出会ったのは2016年1月。「霜降りではない、旨味のあるヘルシーな赤身肉を探していた」奥田シェフにとってオリーブ牛は、まさに理想的な赤身肉だった。
「オリーブ牛は脂のキレも良く、すっきりしていて、酸味もありました」
奥田シェフは、自身が経営する「宮島Bocca Al-che-cciano」(広島県宮島市)でオリーブ牛料理を作った。
2016年3月には、オリーブ牛の発祥地、小豆島に足を運んだ。どんな環境でオリーブ牛を育てているのか、生産者を訪問したのだ。
その後、2017年夏、料理セミナーが都内で開かれた。「オリーブ牛は野菜とオイルとの相性がいい」と評する奥田シェフが、香川の野菜を使ったオリーブ牛料理5品を作ってくれた。
独創性で、精緻で、惚れ惚れするぐらい美しい奥田シェフのオリーブ牛料理に、参加者全員が思わずため息をもらしたものだ。

〈地元香川でも奥田シェフのオリーブ牛セミナーを受けたい〉

そんな県民の要望もあり、2018年10月、高松市内でセミナーが行われた。奥田シェフに、香川の野菜とオリーブ牛との新しい組み合わせを提案してもらうことにしたのだ。
参加者はレストランオーナーなど、オリーブ牛の美味しさを知っている食のプロ50名。
野菜ソムリエも復数出席した。野菜とオリーブ牛の、新しいマリアージュに興味を持つ野菜ソムリエが、奥田シェフのセミナーを受講したのだ。

用意された県産野菜は、セレベス、三豊ナス、金時人参、食べて菜、讃岐本鷹、サツマイモ、青ネギ、ニンニク。
オリーブ牛は、奥田シェフの希望もあり、ばら肉とサーロインとモモ肉が準備された。

一品目は「オリーブ牛ばら肉の赤ワインみりん煮込み」。
4センチ角に切ったオリーブ牛ばら肉を、赤ワインとみりんが入った鍋で柔らかくなるまで煮る。赤ワインだけでなく、同量のみりんも加えたところがポイント。
「みりんは浸透率がよいので、赤ワインにみりんを足すと肉に赤ワインの味が入りやすくなります。しかもポルト酒(独特の甘味とコクを含むポルトガル産ワイン)のような味わいにもなるんです。おまけにポルト酒を使うよりも原価が安くなります(笑)」
この料理には、食べて菜が使われた。
「葉野菜は、葉っぱ、茎、真ん中の芯ではそれぞれ味わいが違います。3つに分けてください」
塩をした食べて菜の茎をアーリオオーリオで炒める。高温で炒めると繊維が切れて水分が出てくる。火をやや弱め、葉っぱも入れる。火が入ったら、真ん中の芯も炒める。
「この部分は、陽があたらずに育っているので柔らかいんです。生でも食べられるので、火を止めてから入れてください。火の通し方だけで、甘くて酸っぱくて苦い食べて菜の味を作ります」

煮込んだオリーブ牛ばら肉と炒めた食べて菜を皿に盛り、生でも食べられる食べて菜の真ん中の芯を飾りにあしらえば完成。

二品目は「紅茶のタンニンを入れたニンジンとローストしたオリーブ牛」。
「この料理には、ローストやステーキにするともっとも美味しいサーロインを使います」
肉を4センチ厚に切る。これをフライパンで焼き、すべての面に美味しそうな焼き色をつける。塩コショウをしたら、オーブンへ。

【厚い肉を美味しく焼く奥田マジック】

参加者から「厚い牛肉を美味しく焼くコツを教えてほしい」という質問が出た。
「ポイントはひとつ。肉の表面についている水滴を丁寧にふいてください」
その理由は以下の通り。
肉に焼き色がつくのは230度ぐらい。一方、水の沸点は100度。
肉を焼く温度と水の沸点がどう関係するのか。そう思った参加者もいたはず。
「肉に水滴がついていると、沸点の100度になるまでに時間がかかります。そのため肉に色がつきにくくなるので、肉の表面についている水分を布巾などで取り除いてください」

肉をオーブンでローストする間に、つけ合わせのニンジンのピューレを用意する。
ニンジンは坂出産の金時人参。
肉のつけ合わせにするニンジンは、ブイヨンなどで煮ることが多い。ところが、奥田シェフは、水だけで金時人参を煮はじめた。
「70度で1時間加熱をすると、ニンジンに含まれる少量のでんぷん質が糖に変わります。つまり調理時間と温度に配慮すれば、水だけで甘みのある美味しいピューレを作ることができます」
鍋に水を注いだら、ゆっくりとニンジンに火を入れる。ニンジンがある程度やわらかくなったら、塩を加え、ミキサーにかける。
ニンジンのピューレに、濃く煮出した紅茶を加える。

今度は、奥田シェフから質問が出た。
「ステーキなどの肉料理にニンジンが添えてあるのはなぜかわかりますか。ニンジンには獣臭を消してくれる効果があるからなんです。では、ニンジンになぜ紅茶を加えたのでしょうか」
サーロインの部位は脂が多い。その脂を、紅茶に含まれるタンニンで切るというのだ。
脂を多く含む中国料理を食べながら烏龍茶を飲むと、口の中がさっぱりする。ニンジンに紅茶を加えたのは、それと同じ効果のある、つけ合わせを作るためだ。
「サーロインは脂が多く、獣臭もあります。紅茶を入れたニンジンのピューレを食べると、獣臭を消してくれます。しかも噛んでいるうちに、口の中でオリーブ牛が軽くなっていく効果もあるんです」

オリーブ牛が焼けたら、アルミホイルで包む。
熱は、温かいところから冷たいところに移動する。そのまま放置すると熱が外へ逃げてしまう。アルミホイルで包むと、肉から出た熱がアルミホイルにぶつかり、肉の内部に戻ってきて肉がピンク色に焼き上がるのだそうだ。

「ところが、アルミホイルに包んだことで、せっかくきれいに焼き上がった表面がふやけてしまいます。表面の水分をペーパーでふき取ったら、油を引いたフライパンでもう一度肉を焼いてください」
短時間で焼き色が付く230度まで油の温度を上げて、焼き色を復活させる。
手間をかけたことで、表面がパリッと焼き上がった。

事前に用意してあったものがある。フライパンで炒ったパン粉と、青ネギの粉だ。
オーブンで真っ黒になるまで焼いた青ネギをミキサーにかけ、塩を加える。これに炒ったパン粉を混ぜる。
きれいに焼き上がったオリーブ牛サーロインに、パン粉と青ネギの粉をまぶす。
紅茶が入ったニンジンのピューレを皿に広げ、オリーブ牛を盛り付ければ完成。

【奥田流パスタ茹で論】

サービス精神旺盛な奥田シェフは、当初予定になかったパスタを作り始めた。
三品目「オリーブ牛と讃岐の青ネギのペペロンチーノ」である。

フライパンにアーリオオーリオを用意し、オリーブ牛を炒める。
ここでパスタを茹でるのだが、その茹で方に奥田マジックを披露してくれた。
「ふつうパスタは1%の塩で茹でます。でも、僕は、塩分濃度2.7%のお湯を用意します」
それはなぜか。
「塩分が2.7%の水を加熱すると沸点が1度上がります。するとどうなるか? パスタが、糊状になりにくくなるんです。しかも塩の力で、パスタがつるつるになります」
もちろん、そのままだと、塩っぱくて食べられたものではない。
「茹で上がったパスタをザルにあけ、別の鍋に用意しておいたお湯でゆすぎます」
しかもそのゆすぎ時間は、合わせるソースで変えるというのだ。
塩気が強いミートソースは40秒。
トマトソースなら4秒。
塩を使っていないペペロンチーニは2秒。
「うちの店では、この方法でパスタを茹でています」

お湯でゆすいだパスタをオリーブ牛を炒めたフライパンに入れて合える。
「このときフライパンをふりすぎないでください。フライパンをふればふるほど麺と麺がこすれあい、糊状になってしまいます」
パスタを皿に盛り、讃岐の青ネギを切ったものを入れれば、できあがり。

四品目は「オリーブ牛モモ肉と讃岐本鷹と野菜のインパデッラとでんぷんを甘くしたサツマイモ」

適当に切ったサツマイモを米と一緒に炊く。サツマイモは前述のニンジン同様、70度で50分
以上加熱すると、サツマイモに含まれるデンプンが糖に変わる。炊きあがったらサツマイモを取り出す。ご飯はサツマイモの甘みが残り、そのままでも美味しく食べられる。
オリーブ牛モモ肉は、長さ5センチ×厚み5ミリ×幅7ミリの細切りにする。モモ肉に塩コショウをし、油を引いたフライパンで軽く焼く。
フライパンにオリーブオイル、ニンニク、讃岐本鷹を入れて弱火で炒め、讃岐本鷹とニンニクの香りをオリーブオイルに移す。
青ネギの根っこを炒め、炒めたモモ肉と、事前に揚げておいた三豊ナスを加える。
皿に盛り付け、青ネギの青い部分を添える。

【イタリア料理は目玉焼きである】

最後に、やはり予定になかった料理を作ってくれた。
「三豊ナスのサラダ」だ。
ナスをやや大きく切ったらボウルに入れ、味を出すために少量の塩をふる。そこにオリーブオイルを多めに入れ、手で混ぜてナスに油を吸わせる。再度、香りづけにオリーブオイルを軽く入れ、少量の塩をふる。ブラックペッパーをふれば完成。
「粉チーズがあれば少しかけて、レモンを軽くふってください。これで完成です。簡単すぎて、料理ではないだろうといわれますが、かなり美味しいです」
仕込み時間がないときは、この料理をつけ合わせにすることもあるそうだ。

予定外のレシピを教えてくれたのは、奥田シェフが三豊ナスに感動したからだ。
「このナスはかなりスグレモノです。みんなと一緒にブランドにした宮崎の佐土原ナスと双璧をなすブランドとして、もっと売り出してほしいです。絶対に売れます」
奥田シェフによれば、ブランド化される食材には4つの絶対条件があるという。
独特の食感を持っていること。
いろいろな素材とあわせられるもの。
他の食材とあわせた際、新たな味わいが生まれるもの。
飲み込んだとき、香りが喉の奥から波のように押し寄せるもの。この4つだ。
「フォアグラ、トリュフ、フカヒレ、ツバメの巣などは、この4つの条件を備えています。三豊ナスは、ブランド化される、4つの絶対条件を持っています」

イタリア料理の基本はなにか。奥田シェフに尋ねた。
「食材を混ぜて、ひとつの味にするのがフレンチ。片や、イタリア料理は目玉焼きです」
目玉焼き?
「そうです(笑)。白身の味も、黄身の味も、塩や醤油の味も、すべての味がわかるように作る。それがイタリア料理です」
この日、参加者の大半が、初めて奥田シェフの〈目玉焼き的なイタリア料理〉を賞味した。
オリーブ牛の味も、野菜の味も、それぞれの味と旨味を愉しめる料理だった。
けれど、咀嚼し、飲み込だとき、すべての食材が混然となる。

この日、舌と目で経験した料理を、セミナー受講者がそれぞれの持場で奥田マジックを実践してくれるに違いない。