オリーブ牛 公式サイト


日本の至宝、オリーブ牛

オリーブ牛ファンのニューヨーカーが来日。
香川の和牛に惹かれた理由を語った。

中島茂信・文
藤田修平・写真

全国和牛能力共進会(通称全共)が9月7日から11日の 日間、宮城県で開催された。全共は全国の和牛500 頭が集結する、5年に一度開かれる和牛のオリンピック。今年も香川県からオリーブ牛が参加した。全共を視察するため、ニューヨーカー、ニック・ソレラスが二度目の来日を果たした。宮城から都内に戻ってきたニックを取材した。

オリーブ牛との出会いは数年前にさかのぼる。香川県では、数年前からニューヨークでオリーブ牛のティスティング会を開いていた。ジャーナリストやメディアを呼び、オリーブ牛を食べてもらうイベントだった。その会に参加したひとりがニックだった。

昨年、香川県ではニックとミシュランシェフを香川県に招聘し、オリーブ牛を育てている現場を見てもらった。「高松市内でオリーブ牛を食べたし、風光明媚な小豆島や豊島にも案内してもらいました。昔ながらの風情がいまも残る島で、のびのびと育てられている牛を見ることができました」牛舎を見学した後、高松市内にある食肉販売会社「カワイ」の食肉加工工場も見学した。情緒豊かな島とは対象的な、最新設備が整った加工工場だったことも興味深かった。だが、それよりも匠の技を身に付けた職人が、枝肉を食肉に加工する脱骨作業と呼ばれる工程を見て、感銘を受けた。

ニックによれば、アメリカで「あの会社には最新技術がある」という場合、技術そのものよりも、単に早く出荷できることを意味する。最新技術、最先端技術という言葉は、スピードの優劣に使われるというのだ。「ところが、カワイでは、よりよい肉を提供するために、最新技術が整った工場で匠の技が駆使されていました。牛刀でオリーブ牛を切り分ける職人の姿を見たことでオリーブ牛が美味しい、もうひとつの理由を知ることができました」とニックは語る。

《Nick Solares のプロフィール》
12 年前、趣味で始めたフードブログ「EATER NEWYORK」で脚光を浴びた。現在、フードライターとして 活動を続ける傍ら、肉に特化した「The Meat Show」というチャンネルのホストもつとめている。


The Meat Show に掲載されたカワイ社視察の動画

本物志向のニューヨーカーに日本の宝、オリーブ牛を味わってほしい

そして今年。全共を見学し、オリーブ牛が脂質の部門で一位を獲得したことを知り、自分のことのように喜んだとニックは告白する。 「やっぱりだろ、と自慢したくなりました。これまで世界中でいろいろな肉を食べてきました。でも、オリーブ牛の脂にはこれまで経験したことがない味わいがあり、只者ではないと思っていました。やっぱりそうだったのか、と確認することができました」とニックは微笑んだ。

近年、日本国外で“WAGYU”を育てている国がある。そのことをどう思うかとニックに尋ねた。
「和牛と呼べる牛は日本以外では生産できない、というのが僕の持論です。品種をかけ合わせれば、小手先でできなくはありません。でも、日本で飼育された和牛と、“WAGYU”では、意味合いがまったく異なります」 ニックは、和牛と“WAGYU”との違いをシャンパンに例えた。フランスのシャンパーニュ地方で造られたものがシャンパン。同じ製法で造ったとしても、シャンパーニュ地方以外で生産されたものは、スパークリングワインと呼ばれる。 「ところが、シャンパーニュ地方以外で造られたものもシャンパンと呼ぶ人がいます。それと同じことがいま、和牛の世界でも起こっています」とニックは指摘する。「香川の特産物であるオリーブを原材料としたオリーブ飼料を食べて育った牛が、オリーブ牛です。香川という土地ならではの、特別な飼育方法で育てられています。それがオリーブ牛の最大の特徴です」

食に興味がある人は、知れば知るほど本物を食べたくなるとニックは説く。 「とくに富裕層や食通はますますアルチザンに向かう傾向にあるし、実際、需要も関心も増えてます」 ニックは本物、手作り、職人という意味でアルチザンという言葉を使った。 けれど、本物の和牛を輸出するとなると、値段の高さがネックになるのではないか、とニックに尋ねた。 「大量に食べるのではなく、美味しいオリーブ牛を少量味わおう、と訴求すればいいのではないでしょうか。これほど手塩にかけて育てたオリーブ牛が輸出されるのであれば、高くて当たり前。それを理解してもらえれば妥当な価格だと納得して買ってもらえるはずです。カワイのような技術力のある会社の職人が加工したオリーブ牛ならば、海外でもきっと流通させることができると思います。オリーブ牛は日本の宝だ、と断言できます」

日本の宝が、ニューヨークに輸出され、レストランで提供される日も近い。オリーブ牛をレストランで賞味したニューヨーカーがどんな感想を抱くのか。これまで食してきた和牛と、何がどう違うと感じてくれるのか。ニックと同じようにオリーブ牛のファンになってくれるのか。興味は尽きない。