オリーブ牛 公式サイト

讃岐牛・オリーブ牛とさぬき食材
~ 高松国際ホテル オリーブ牛「特別美食会」~

文:中島茂信

「ファンタスティック!」ニューヨーカー、ニック・ソラレスは称賛した。「オリーブ牛と黒トリュフの香りが絶妙のコンビネーション。テロワールを感じる料理でした」
ニックが称美したのは、兵庫県芦屋にあるフレンチ「メゾン・ド・タカ 芦屋」の料理長、髙山英紀シェフが作ったアミューズである。
2月17日、髙山シェフは、「高松国際ホテル」で開催された「讃岐牛・オリーブ牛とさぬき食材『特別美食会』」に招聘。高松国際ホテルの松原勉シェフと、夢の饗宴を演じたのだ。


髙山英紀シェフ 井上旭シェフの「シェ・イノ」で8年修業後、2004年に渡仏。 三ツ星レストラン「ラムロワーズ」「レジス・エ・ジャック マルコン」、二つ星レストラン「ジル」で修業。帰国後、「ジル」の日本初出店となる「メゾン・ド・ジル 芦屋」のシェフに就任。2016年、自身の名を冠した「メゾン・ド・タカ 芦屋」としてリニューアルオープン。世界的なフランス料理コンクール「ボキューズ・ドール国際料理コンクール2015」日本大会、アジア・パシフィック大会で優勝、世界5位に。そして2017年10月「ボキューズ・ドール国際料理コンクール2019」において2度目の日本代表に選ばれた。


松原勉シェフ 「高松国際ホテル」洋食総料理長。 2004年にドイツで開催された世界料理オリンピック大会に日本代表メンバーとして、3部門で銀メダル獲得。2007年、フランス料理界の名誉ある勲章「ディシプル・ド・オーギュスト・エスコフィエ」を受章。高松国際ホテルの歴代料理長が引き継いできた伝統の味を継承しつつ、地元香川の食材を積極的に取り入れ、香川の味を追求し続けている。


【第一章:アミューズの響宴】

髙山シェフと松原シェフによる記念すべき「特別美食会」のアミューズに、髙山シェフはオリーブ牛サーロインを選んだ。

《髙山シェフのアミューズ》

熟成黒ニンニク香るオリーブ牛サーロインの炙り焼き 黒トリュフ添え
香川県グリーンアスパラガスのソテー 茸のコンソメ 小豆島オリーブの香り

一品目に、なぜメインにもなりえる、オリーブ牛サーロインを選択したのか。髙山シェフに尋ねた。
「最初の一皿で香川を表現したかったことから、オリーブ牛サーロインと香川を代表する素材としてアスパラガス、オリーブオイルをお出ししました。とはいうものの、アミューズから少し飛ばし過ぎたかもしれません(笑)」
炙ることで旨みを凝縮させたオリーブ牛サーロインに、黒ニンニクの香りをまとわせた。
そのオリーブ牛に、この時期もっとも美味な黒トリュフを添えた。見るからに旨そうな料理に、旨みの強い茸のコンソメが注がれた。
「贅沢な一皿からスタートしてほしい」と考えた髙山シェフが、第1ラウンドのゴングが鳴った瞬間、最高のプレゼンテーションを用意したのだった。
「スープと一緒にオリーブ牛を召し上がってください。サーロインの脂を、さっぱりと食べることができると思います」(髙山シェフ)

髙山シェフのこのアミューズを、ニックはファンタスティックと讃えたのだ。
「オリーブ牛そのものが香りが高く、ラグジュアリー。香りが何層にもなっています。黒トリュフがなくても十分成立する一品でした」とニックは感想を述べた。

《ニック・ソラレス》

1日のページヴューが約50万件を超える食専門ウェブサイト「Eater NY」の中で「The Meat Show」のホストを務める肉料理専門記者。同番組は2015年、アメリカのテレビドラマをはじめとする番組や、テレビに関連する様々な業績に与えられる全米でも高い認知度と注目度を誇る「NYエミー賞候補」に2回ノミネートされるなどの功績をあげる食の著名番組。2016年10月には、オリーブ牛の、取材ムービーを「THE FOOD FILM FESTIVAL EAT JAPAN! 」に出品し、YouTubeにて発信。現在、オリーブ牛関連動画7本において177万人アクセスを記録中。

ニューヨーカー、ニックがオリーブ牛と出会ったのは2015年11月。讃岐牛・オリーブ牛振興会(会長:森山英樹)は、オフィスムスビ 代表取締役 鈴木裕子氏と連携し、ニューヨークでオリーブ牛のテイスティング会を開いてきた。ジャーナリストやメディアを招き、オリーブ牛を食べてもらうイベントだった。その会に参加したひとりがニックだった。
オリーブ牛の魅力に惹かれ、2年前、ニックは初めて香川の地を踏んだ。高松市内でオリーブ牛を堪能。オリーブ牛が育てられている小豆島や豊島の農場を見学した。
昨年9月、二度目の来日。仙台で開催された全国和牛能力共進会(通称全共)の視察に訪れたのだ。
その共進会で、オリーブ牛が脂質の部門で一位を獲得したことを知り、ニューヨーカーは我がことのように喜んだ。

「これまでいろいろな肉を世界各国で食べてきましたが、オリーブ牛の脂にはこれまで経験したことがない味わいがありました。全共の結果を知り、やっぱりオリーブ牛は只者ではないと確信しました」
そして今回、髙山シェフと松原シェフが共演する、オリーブ牛を食べる「特別美食会」のためだけに三度目の来日を果たした。


《髙山シェフの前菜》

藁で燻したクリ・ランプ肉とフォアグラのマーブル仕立て 柑橘系のチャツネ
すね肉の赤ワイン煮込みのクロケット キャラメリゼした玉ねぎのピュレ添え

一晩かけて赤ワインでゆっくりと煮込んだすね肉をフォンドボーと一緒に煮詰め、パセリのクロケットに仕立てた。その下に、玉ねぎのピュレを添えた。クロケットの脇には、藁で燻したクリ肉、ミンチにしたランプ肉、フォアグラと里芋のテリーヌをあしらった。
「オリーブ牛を無駄なく、しっかりと使いたかったことから、いろいろな調理方法をこの一皿に詰め込みました」と髙山シェフは説明した。

「日本料理は調和の高さが特徴だと理解していますが、髙山シェフのフレンチにもそれが見られるのが面白い」とニックは微笑んだ。「髙山シェフのクロケットは創作的で、美しいプレゼンテーションでした。見た目は繊細で、洗練されていると感じましたが、実際食べてみるとお母さんが作る、心温まる家庭料理のようでした。そのギャップがまた素晴らしかった」

髙山シェフの料理が二品続いたところで、松原シェフの前菜が登場。
オリーブ牛のいろいろな美味しい部位をアレンジできればいいと思い、松原シェフはメニュー構成を考え抜いた。結果、前菜にはウデ肉を用意した。


《松原シェフの前菜》

讃岐味噌の香りを付けたウデ肉
金時人参のムースと高瀬茶のジュレと共に

「髙山シェフとコラボするにあたり、私は出すぎず、引き過ぎないように心がけました。ところが、髙山シェフはアミューズにサーロインを選んだ。正直申し上げて、牛肉の最高の部位のひとつで、メインになる素材をアミューズに出すか?と意表をつかれました(笑)」
高松在住の料理人、松原シェフにとってオリーブ牛は使い慣れた食材だった。だからこそアミューズにオリーブ牛を使ったことは一度もない。
「でも、髙山シェフのアミューズを食べてみて、これもありだなと再確認させていただきました」と松原シェフは告白する。
髙山シェフの感性に感化され、松原シェフの創作意欲に火が付いた。素材はこれまで何度も向き合ってきたオリーブ牛ウデ肉だが、調理法に一工夫。オリーブ牛ウデ肉を、香川らしく讃岐味噌に一晩漬け込んだものをやや厚めにカット。これをローストすることでフレンチに仕上げた。

「見た目がきれいで、これが料理なのかと驚きました。料理に遊び心もあり、美味しくてそのギャップが面白かった。しかもオリーブ牛は香りが豊かで、何層にも深い味わいがありました」とニックは満足そうに語ってくれた。


特別美食会ではニックがNYでのオリーブ牛の反響をスピーチされた。
右隣はオフィスムスビ 代表取締役 鈴木裕子氏

【第二章:メインの響宴】

髙山シェフのメインが運ばれてきた。

《髙山シェフのメイン》

オリーブ牛フィレ肉と三角バラ肉のファルシィ
高知山椒の香り 香川県産野菜のソテー添え

牛肉の中で最高の部位と呼ばれるフィレ肉を使用。そのフィレ肉を開き、鶏のムースと椎茸に山椒の香りを入れたものを塗った。そのフィレ肉のまわりを薄く切った三角バラ肉(カルビ)で包む。それによりカルビの香りをフィレ肉にまとわせた。ソースは牛でとったコンソメ。

「オリーブ牛の特徴を表現するには最高の調理法です。オリーブ牛の香りを最大限に引き出した、最高の料理でした。野菜とのバランスも良かったです」
(ニック)

髙山シェフは、オリーブ牛の香りを強調したメインを披露。
方や、松原シェフは食感を楽しめる一皿を供した。


《松原シェフのメイン》

オリーブ牛ミスジ肉の炭火焼き デコポンのコンフィチュールとローストアーモンド風味
かめびし醤油のソイソルトをアクセントに

「デコポンの酸味、アーモンドの香りなど、いろいろな風味を使っていながら、バランス良く仕上げていました。松原シェフの料理は、部位の異なるオリーブ牛を使いこなしつつ、それぞれの特徴を引き出していました」とニックは評した。

「ミスジ肉のふわっとした食感と、しっかりとした肉の食感、デコポンの甘味と酸味、香ばしいアーモンドの食感がいけたかなあ、と思っています」と松原シェフ。

松原シェフはこれまでに何度もオリーブ牛を料理してきた。一方、髙山シェフは今回が初体験。
香川での饗宴に際し、芦屋の自店で試作を繰り返してきた。

「オリーブ牛は赤身と脂分のバランスが素晴らしい。オレイン酸を多く含む。融点が低いため、口溶けがいいと思います」
オリーブ牛に興味を持った髙山シェフは、饗宴の前、高松市内でオリーブ牛を飼育する農家の農場を見学した。
「搾ったオリーブの実を乾燥させたオリーブ飼料も、それを美味しそうに食べるオリーブ牛も初めて見させていただきました。また、オリーブ飼料を食べた牛の肉質が良くなることも実感できました。そしてなによりも、搾ったオリーブの実を飼料にする、循環型農業にも感銘を受けました。オリーブ牛は品質が高いだけでなく、テーマ性もストーリー性もあります。今回お出しした一品目のアミューズは、自分の店でも出したいと思っています」(髙山シェフ)


「感性の異なるシェフとのコラボは刺激になるし、勉強になります。かつてフランス産食材でフランス料理を作る時代が長年続いてきました。近年、オリーブ牛のような国産食材が誕生したことで、日本のテロワールで勝負できる時代になったと思います」(松原シェフ)
「松原シェフの仰る通りです。僕ら料理人は、もっと胸を張って料理を作らなければならないと痛感させられました」(髙山シェフ)

今回の特別美食会には特別ゲストとして浜田恵造知事も参加していた。美食会終了後、浜田知事に感想を聞いた。
「松原シェフと、お招きした髙山シェフ。両シェフが香川が誇る、旬の食材を存分に使いこなし、美味しい料理を作っていただいたことに感謝いたします。おふたりのおかげで、オリーブ牛だけでなく、香川の食材が世界に通用することを再確認できました。オリーブ牛をブランドする際、地名ではなく、香川の県木であるオリーブをつけて正解だったと改めて思っています。私も含め参加者全員が、特別な晩餐を楽しませていただくことができました。髙山シェフ、松原シェフ、本日は誠にありがとうござました。」